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消費市場として注目され始めたベトナム市場

一人当たり実質GDPが2,000米ドルを超え(2014年4月)、都市部であるホーチミン市やハノイ市においては、その2−3倍と言われており、急激に消費市場としての存在感を出しつつあるベトナムで、小売・流通業、飲食業や美容業等のサービス産業の進出が顕著になってきている。

ベトナムの人口は約9,000万人で、平均年齢27歳。2012年時点のベトナムの人口構成の中で、現在最も多い年齢層が10歳代後半から20歳代前半である。これから、進学、就職、結婚・出産、住居購入と、ライフタイム前半の大きな購買行動に繋がるイベント時が待ち受けており、消費市場の高度な成長が見込まれることも注目度を上げている要因だ。

また地政学的にも既にTPPに参加を表明しており、安倍政権によるTPPへの協議参加の表明、2015年にASEAN10カ国の市場自由化、関税撤廃も計画されていることもあり、タイ(6500万人)、カンボジア(1500万人)、ラオス(650万人)、ミャンマー(6200万人)が含まれるASEANメコン経済圏の東の玄関としても、ベトナムが注目されている。

特筆するところでは、女性の就業率が70%を超えていることが上げられる。外食産業は屋台や持ち帰り店等を含め、生活に密着した存在となっており、朝食、昼食はすべて外食、晩ご飯については、平日は事前にカットされた食材を宅配に取り寄せ自宅で調理をする「中食」で、週末は完全に「外食」という女性も少なくないようだ。

イオンモール1号店
イオンモール1号店

家電や日用品においても、テレビCM、雑誌類、インターネット等、様々な形で、日本を含めた外資系企業の商品・サービスの広告が氾濫している状況だ。特に注目するべき点としては、女性が購買決定権を握っている傾向が強く、マスマーケティングは女性を意識した内容になっており、可処分所得が増加している大都市圏の女性向けのマーケティングビジネスも非常に注目されている。

女性が牽引するベトナム消費動向

ホーチミン市やハノイ市等、大都市圏の一人当たりGDPは2012年に3,500米ドルを超え、共働き世帯では、農村地域の世帯の約5倍以上の可処分所得があると考えられている。特にホーチミン市やハノイ市で目立つビジネスとしては、ヘアサロン、スパ等の美容・リレクゼーション関連のビジネスである。

町中の至る所に、ヘアサロンやスパがあり、週末はお気に入りのスパで1日過ごす女性も少なくない。

ホーチミン市の人気の高いスパでは、フェイシャルトリートメント、ボディマッサージ等はもちろんのこと、ヘアメイク、ネイル、メイクアップ等、ほぼすべての美容サービスが受けられるので、平日の疲れを取る癒しの場として定着している。

料金もトータルサービスで100〜150米ドルと工場労働者の平均月給レベルで安価ではないが、人気店では週末は予約を取らないとサービスを受けられないという。

資生堂のアジアブランド「Za」
資生堂のアジアブランド「Za」

韓国系美容ビジネスの市場浸透度が高いベトナム

ハノイ市、ホーチミン市で目立つビジネスとしてヘアサロン、スパ等、美容・リラクゼーション関連だと伝えたが、その中でも化粧品に関しては、欧米、日本はもちろんであるが、かなり先行してマーケットニーズに応えているのが韓国系商品やサービスである。

日本でも韓流ブームは起こっていたが、東南アジア全域でも同様、韓流ビューティビジネスは、日本よりも先行して市場に受入れられている。大きな要因としては、韓国ドラマやポップカルチャーのメディアでの浸透度の高さが起因している。これは、韓国が官民挙げた文化産業戦略の一環で、無償もしくは低価格でコンテンツを東南アジア全域のテレビ局に提供した結果、韓国のファッション、美容、食事、音楽、ライフスタイル等、韓国の文化を浸透させたことが大きい。ベトナムも同様、若年層女性をターゲットに、韓国ドラマを通じて、ライフスタイルを真似るようになった。
化粧品においては、「Face Shop」や「Skin Food」といった韓国系の低価格化粧品(リップスティックで1本10米ドル程度)が人気で、韓国女優のメイクアップを手本に、どちらかというとセクシー系と言われる“ケバい”メイクを好む女性が多い。日本の美容関連の専門家の方々に言わせると「10年前に流行ったスタイル」だということだが、彼女達ベトナム人女性には、小遣い程度で買えて韓国女優のようになれるということで支持されている。若い女性にしてみると日本製もいいが、高価格で買えないし、見本となる女性もよくわからないということで、なかなか市場浸透が進んでいない状況が続いている。

美容知識が乏しいベトナム人女性

一方、化粧品ビジネスにおいては、基礎化粧品と言われる「肌を白く保つ」「肌を若く保つ」といった機能性化粧品については、日本製を好む傾向が強い。これは10年ほど前より日本で起こった「美白ブーム」で、日本人女性観光客や現地駐在の日本人女性の「肌の白さ」を見て、ベトナム人女性も「自分も白くなりたい」「若さを保ちたい」という欲求に呼応した結果だと思われる。

ベトナムでは移動手段が「バイク」であるため、日焼けには非常に敏感で、気温35℃以上の時でも、バイクに乗る時は、長袖のパーカーを羽織り、手袋をして、サングラスで防備しているが、先の美容専門家からすると「紫外線は確実に通しているため日焼け止め効果は薄い。むしろUVカットの化粧品を使用すれば、長袖を着る必要は無い」ということで、スキンケアに関する知識はほとんど持ち合わせていない状況である。この点を考慮して、美容知識の啓蒙と、対面販売によるコンサルティングセールスを得意とする資生堂はじめ、日本の化粧品メーカーがサロン形式での進出を強化し始めている。

問題は市場価格の設定で、まだまだ一般のベトナム人女性にとっては高嶺の花であるため、マーケットは一部の富裕層に集中しており、狭い市場を取り合っているように見受けられる。

2013年10月にオープンしたVINCOM Royal Cityは、住居とモール、学校、病院等がある新しい都市空間。
2013年10月にオープンしたVINCOM Royal Cityは、住居とモール、学校、病院等がある新しい都市空間。

規制撤廃による新市場登場の予感

現時点では、日本製の化粧品は「高品質」「高機能」だが「高価格」というイメージが強く、なかなか市場を席巻できていない状況にあり、外国製品への関税、また事業活動における規制などの事業課題もあるため、まだまだ完全に市場開放はされていない。ただ日本製品は「メイド・イン・ジャパン」として絶大なブランド価値を持っており、2015年にASEAN市場での市場自由化への期待や、日本のTTP参加による二国間での関税撤廃の動き等の規制緩和が波及することになれば、価格という販売障壁は解消される可能性は高い。このようにASEANの市場自由化や日本のTTPへの交渉参加表明は、新しい市場の創出に繋がり、このビジネスチャンスを享受できるためにも、今は顕在的な需要よりも潜在的な需要を捉えておき、市場で受ける商品・サービスを改良することが、今必要であるという経営者も少なくない。

ベトナム一国だけでなく、ベトナムでビジネスモデルを完成させることで、他のカンボジアやミャンマー等ASEAN後進国への進出もより現実的となると考えるベトナム人経営者もおり、うまくベトナム市場を活用できれば、更なる事業拡大の機会を得られるかもしれない。

ハノイRoyal Cityにあるベトナム”初”アイススケートリンク。平日の日中ながら利用者がいる。
ハノイRoyal Cityにあるベトナム”初”アイススケートリンク。平日の日中ながら利用者がいる。